●ブルーイングとは●
かつて一世紀半もの昔、銃は青い色をしていました。
現代以前の銃の素材は鉄(炭素鋼)です。
銀色に輝く鉄、実は非常に不安定な状態にあり、空気中の水分と酸素と結合し、安定した酸化第二鉄(Fe2O3)という酸化鉄になろうとします。いわゆる赤錆です。
ただ、もう一つの安定した酸化鉄に四酸化三鉄(Fe3O4)「黒錆び」という物があり、その皮膜を作れば赤錆を防ぐことが出来ます。
銃の色とは防錆の為にこの皮膜を薬剤を使い形成させた結果、そのような色になっただけなのです。
この皮膜、厚みがあるほど漆黒に変化するのですが、当時の薬剤では青い色になる程度の皮膜の厚みしか形成することが出来ませんでした。
より厚い皮膜を作ることが出来るようになり、銃の色が漆黒に輝くようになったのは薬剤の技術が発達してからのことなのです。
現代以前の青く光っていた銃、その色合いが語源となり英語でGunBlue(ガンブルー)という言葉が生まれました。
そして、その為の作業工程のことをブルーイングと言うようになったのです。
このブルーイングの方法には二通りあります。
一般的な方法、強アルカリの苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)を主成分とする溶剤を沸点直前の摂氏140℃程度まで加熱し約10分ほど漬け込む方法。
これをホットブルーといいます。
もう一つはコールドブルー、約40℃の温度でブルーイングされます。
これは上下2連や水平2連銃のような鉛でロウ付けされている銃身を着色する方法です。
このような銃身は、ホットブルーでは鉛が高温の溶剤に反応して溶けてしまいます。
このブルーイングに使用される溶剤は、一般的に売られているブルー液と殆ど同じです。
モデルガンのブルーイングと実銃のブルーイングには決定的な違いがあります。
素材が鉄の実銃は防錆のために四酸化三鉄(Fe3O4)の皮膜を作ります。
ですが、モデルガンに使用されている高比重樹脂(ヘビーウエイト樹脂)や金属パーツ類の主成分は亜鉛です。
形成される皮膜は「珪素」(←間違ってたらご指摘ください)です。
亜鉛独特の白錆びは防いでくれますが、求めるものは防錆効果ではありません。
モデルガンにとってのブルーイングとは、より美しさを求めるためだけにあるのです。